近世の讃岐 第2版
ISBN:9784863870420、本体価格:2,000円
日本図書コード分類:C1021(教養/単行本/歴史地理/日本歴史)
390頁、寸法:148×210×19mm、重量458g
発刊:2013/12

近世の讃岐 第2版

【はじめに】
 江戸時代の讃岐の人物で全国的にもっともよく知られているのは平賀源内であろう。志度の蔵番の子に生まれたが、のち江戸に出て博物学を中心として多方面に才能を発揮した。また柴野栗山は牟礼出身の儒学者であったが、徳川幕府の改革の一つである松平定信の寛政改革で行われた、儒学のなかで朱子学を正学とする異学の禁を建言した人物として著名である。
 一方、かれらとは違って讃岐で活躍した人たちとして、讃岐出身ではないが生駒藩の重臣で土木家の西島八兵衛、蘭学を学び全国的にも早く西洋医学にふれた合田求吾・大介兄弟、讃岐三白の一つ砂糖の製造に尽力した向山周慶、測量に詳しく坂出塩田を築造し発明家でもあった久米栄左衛門など、多くの人の名を挙げることができる。
 しかし名を歴史に残さなかったにしても、近世の讃岐の発展に力を尽くした人々が大勢いたことはいうまでもない。砂糖は讃岐の近世の代表的な産業としてその経済的発展を支えたのであり、向山周慶の功績は大いに評価しなければならないが、一方、砂糖生産に従事していた多くの農民や、大坂を始め西日本各地へ砂糖を売り広めていった船頭たちがいたのを忘れることはできない。
 こうした讃岐の近世の歴史を支えた各時期、各層の人々の生活の姿を明らかにして、そこから現在を生きる私たちにとって、これから先の何らかの指針となるようなものを得ることができたらとの思いで、一般の読者を対象にしてつくられたのが本書である。読者が十分に理解しやすいようにと平易な文章を心がけたつもりであるが、歴史独特の用語など難解な点が多々あることと思う。御寛容いただきたい。
 本書は既刊の『古代の讃岐』の姉妹編であり、『古代の讃岐』と同じように写真を多く掲載したが、ご快諾をいただいた方々や関係機関に厚くお礼を申し上げる。終りになったが、執筆に協力していただいた各位には心より感謝する次第である。
  平成12年10月 木原 溥幸

【目次】
一章 讃岐の諸藩と政治
 1節 近世の幕開けと生駒藩
  概説
  (1)豊臣秀吉と生駒親正
  (2)徳川幕府と生駒藩
  (3)三野四郎左衛門と西島八兵衛
  (4)生駒騒動
 2節 丸亀藩
  概説
  (1)山崎氏・京極氏の入部
  (2)藩政の動き
  (3)国産の統制
  (4)安政の財政改革
  (5)支藩多度津藩
 3節 高松藩
  概説
  (1)松平賴重の領内支配
  (2)宝暦の財政改革
  (3)享和の新法
  (4)筧速水と天保の改革
 4節 幕領と朱印地
  概説
  (1)小豆島
  (2)塩飽
  (3)金毘羅領
二章 農民の姿
 1節 検地と村
  概説
  (1)慶長検地
  (2)高松藩の寛文検地
  (3)丸亀藩の寛文・延宝検地と幕領の延宝検地
  (4)近世初期の農民諸階層
 2節 本年貢徴収制度
  概説
  (1)生駒藩
  (2)高松藩
  (3)丸亀藩と幕領
 3節 農民と商品生産
  概説
  (1)商品生産の展開
  (2)地主と小作
  (3)農村工業
 4節 農民の生活
  概説
  (1)住居と衣料
  (2)食生活
  (3)娯楽
三章 ため池と新田開発
 1節 ため池王国の建設
  概説
  (1)水利と干ばつ
  (2)ため池の築造
  (3)井関と掛井手
 2節 満濃池
  概説
  (1)近世の再築
  (2)池普請
  (3)堤防の決壊
 3節 水利慣行と水争い
  概説
  (1)承水慣行と配水慣行
  (2)剣来ヶ端の水論
  (3)別所分木の水論
  (4)奥堂池と三つ子石池の水論
  (5)鹿の井出水の水論
 4節 新田開発
  概説
  (1)井関池と大野原開拓
  (2)新田村
  (3)春日・松島干拓
四章 町の成り立ち
 1節 高松城下町
  概説
  (1)高松城と城下町
  (2)高松上水道
  (3)新湊町の成立
 2節 丸亀城下町と多度津陣屋
  概説
  (1)丸亀城と城下町
  (2)新堀湛甫
  (3)多度津湛甫
 3節 湊町と門前町
  概説
  (1)三本松湊
  (2)観音寺湊・和田浜湊
  (3)白鳥・仏生山・金毘羅
五章 漁業の発展
 1節 近世漁業の展開
  概説
  (1)漁場争いの起こり
  (2)紀州漁民の小豆島入漁
  (3)下津井漁民の讃岐入漁
 2節 漁業の転換と漁場争論
  概説
  (1)井島を二つに分けた争い
  (2)大曽の瀬の争い
  (3)金手の争い
 3節 漁業と漁民の動向
  概説
  (1)安芸漁民の入漁と定住
  (2)海鼠漁と俵物の請負い
  (3)讃岐榎股の鯛網
  (4)幕末期漁民の動向
六章 海と陸の道
 1節 西廻りと塩飽
  概説
  (1)塩飽船方衆
  (2)丸尾五左衛門と城米船
  (3)近世後期の塩飽廻船
 2節 讃岐廻船の動き
  概説
  (1)客船帳と讃岐廻船
  (2)讃岐廻船と北国
  (3)太神丸
 3節 讃岐の街道
  概説
  (1)高松藩の道
  (2)丸亀藩の道
  (3)峠道
 4節 遍路道と金毘羅街道
  概説
  (1)遍路道とその成立
  (2)金毘羅五街道
七章 讃岐三白
 1節 綿業の発展
  概説
  (1)高松藩の綿業
  (2)丸亀藩における綿業の発展
 2節 塩業の発展
  概説
  (1)坂出塩田と久米栄左衛門
  (2)屋島塩田
 3節 砂糖業の発展
  概説
  (1)讃岐への製糖技術の伝来
  (2)製糖業の発展
  (3)江戸時代の製糖技術
八章 民衆騒動の展開
 1節 近世前・中期の騒動
  概説
  (1)小豆島越訴と平井兵左衛門
  (2)高松藩寛延期の騒動
  (3)西讃の寛延百姓一揆
 2節 近世後期の騒動
  概説
  (1)塩飽大工一揆
  (2)東坂元村・新田村・河内村の村方騒動
  (3)宇足津・坂出の打ちこわし
  (4)金毘羅・榎井打ちこわし
 3節 幕末の百姓騒動
  概説
  (1)丸亀藩領大麻村の騒動
  (2)高松藩領松原村の騒動
  (3)小豆島西部六郷百姓一揆
九章 幕末讃岐の政治状況
 1節 高松藩の動向
  概説
  (1)長谷川宗右衛門
  (2)攘夷と農兵取立
  (3)松崎渋右衛門
 2節 丸亀藩・多度津藩の動向
  概説
  (1)丸亀藩御固場
  (2)土肥大作
  (3)多度津藩の洋式鉄砲隊
 3節 小橋安蔵と日柳燕石
  概説
  (1)小橋一門
  (2)金毘羅の志士たち
  (3)日柳燕石の活躍
十章 宗教政策と民衆信仰
 1節 キリシタン禁制
  概説
  (1)塩飽・小豆島のキリシタン
  (2)生駒藩とキリシタン
  (3)キリシタン禁制
 2節 寺院と神社
  概説
  (1)生駒藩の寺社復興
  (2)高松藩と寺社
  (3)丸亀藩と寺社
 3節 四国遍路
  概説
  (1)四国遍路の先達たち
  (2)真念と四国遍路の確立
  (3)四国遍路の実態
 4節 金毘羅参詣
  概説
  (1)生駒藩・高松藩の保護
  (2)代参と参拝寄進講
  (3)金毘羅参詣の隆盛
十一章 学問と文化
 1節 藩校
  概説
  (1)講道館
  (2)正明館
  (3)自明館
 2節 儒学者と洋学者
  概説
  (1)後藤芝山と青葉士弘
  (2)平賀源内
  (3)合田求吾と柏原謙好
 3節 私塾と寺子屋
  概説
  (1)弘浜書院
  (2)明善郷校
  (3)寺子屋
 4節 史・誌の編さん
  概説
  (1)「三代物語」と「翁嫗夜話」
  (2)「讃岐国名勝図会」と「金毘羅参詣名所図会」
  (3)「歴朝要紀」と「西讃府志」
  (4)「全讃史」と中山城山
 5節 建築と工芸
  概説
  (1)城郭・寺社
  (2)人々の暮らしと建物
  (3)讃岐の陶芸
  (4)玉楮象谷と讃岐漆芸
十二章 近世の考古学
 概説
 (1)遺跡・遺物への関心と記録
 (2)近世における考古学研究
 (3)高松城東ノ丸
 (4)丸亀城と高原城
 (5)近世遺跡の調査
 (6)墓地

【著者紹介】
〔編著者〕
木原 溥幸
〔著者〕
井上 勝之
植村 正治
岡 俊二
小山 泰弘
千葉 幸伸
平井 忠志
眞井 孝征
丸尾 寛
溝渕 利博
渡部 明夫

【出版社から】
再版本ですので内容的に大きな修正はありません。