教員としてのはじめの第一歩
ISBN:9784863870710、本体価格:1,200円
日本図書コード分類:C1037(教養/単行本/社会科学/教育)
114頁、寸法:148×210×6mm、重量197g
発刊:2016/03

教員としてのはじめの第一歩

【まえがき】
 世阿弥の名言「初心忘るべからず」は、誰もが一度は見聞きしたことがあるだろう。教員としてスタートを切る皆さんにとって、初心とは如何なるものであろうか。長い教員人生のスタートラインに立ち、これから続く教員としての長い道のりにどのような思いや光景を描き、その第一歩をどのように歩み始めるのだろうか。何事においても、我々がその第一歩を踏み出すときには、大きな不安や心配を伴うものである。
 小学校や中学校への入学時の不安と教員生活スタートの不安は、その内容や質も大きく異なっている。大学生までは、状況が変わりつつも学ぶ側・教えられる側であったのに対して、教員として学校に勤務するということは、逆の教える側に立つことである。つまり、今まで経験したことのない最大の環境変化と言えるかもしれない。不安や心配、戸惑いがあって当たり前。しかし、そのなかでも第一歩を踏み出さなければならないのである。
 そして、つまずきながらも、立ち止まりながらも困難を乗り越えて、一歩一歩進まなければならないのである。皆さんの大きな魅力でもある強みは、若さと情熱である。若いということは、それだけですばらしいとも言われる。年を重ねるにつれて、物事を無難に収めようと思考が働いたり、昔はよかったと懐古したりしながら溜息をつきがちである。しかし、どんなに時代や社会が変わろうとも、教育という営み、そして学校は形を変えながらも有り続けるであろう、そう信じたい。
 現在、大量退職に伴う新規採用者の急激な増加が顕著である。平成27年度に実施された全国の教員採用試験における競争倍率をみると、小学校で約3.4倍、中学校で約6.3倍、高等学校で7.6倍、特別支援学校で3.9倍、養護教諭7.9倍であり(栄養教諭については採用なしの県も多い)、採用が厳しかった時と比較すると「合格しやすい」状況が続いているといえる。近年の大量採用の実態は、学校現場に様々な問題を投げかけているかもしれないが、同時に、新たなエネルギー源となる活力を注ぎ込んでいるのも事実である。
 教員養成においても実践的指導力の育成をめざして、精一杯の取組を各大学でしているところである。このような背景のなか、平成15年度に香川大学と香川県教育委員会との間で始まった人事交流制度も13年目を迎えた。現在では全国に広がり、30を超える大学で取り組まれている。大学の教員養成において、学校現場での経験を生かした講義内容や演習等でのかかわり、研究者教員とのTTなど、多様な実践例がみられる。同時に、交流人事教員に期待され求められる内容も少しずつ変わってきている。
 そこで、交流人事教員経験者の力を結集して、卒業生や新規採用者、若年教員にとって、教員としての第一歩を歩む際の分かりやすい手引書を刊行したいと考えた。できれば、具体的な事例等を掲載する実践の書としたいという願いをこめて、「教員として はじめの第一歩 ~若き力を生かしてはばたけ~」を編集してきた。
 第1章では、「教職の魅力―すばらしい職業―」として、各先生方の経験や事例をもとに、教員という職業の魅力を述べた。
 第2章では、「新たなスタートへの準備とできること」について具体的に考えてみたいと思い、具体的なチェックリスト等を入れながらまとめた。
 第3章では、「挑戦“はじめの第一歩”」として、何もかもが初めての体験となる具体的な行事や出来事について、留意点や心構えを紹介する。
 第4章では、「先生になるということ ―自らを磨き、めざす教師像へ―」として、教員という職業の特性や使命についてふれるとともに、教員になることの意味を再確認してほしいという思いから執筆した。
 是非、教員の第一歩を歩み出す皆さんにとって、少しでも教育実践スタートの参考になるとともに、実践に基づきながら自らの教育方針や教育哲学を一つずつ積み重ねる拠り所の一助となればと願っている。
  平成28年 成人の日 植田 和也

【目次】
まえがき(植田和也)
第1章 教職の魅力-すばらしい職業-
 Ⅰ 教職の魅力(阪根健二)
 Ⅱ 学校、教師の魅力(山下真弓)
 Ⅲ 子どもたちに囲まれて(大西えい子)
第2章 新たなスタートへの準備とできること
 Ⅰ 自らを磨き鍛えるために-自己の長所・短所を知り成長-(植田和也)
 Ⅱ 4月に向けた持ち物の準備と心構え(谷本里都子)
 Ⅲ 4月を乗り切るために(植田和也)
第3章 挑戦“はじめの第一歩”
 Ⅰ 印象の良い自己紹介と着任式・始業式でのポイント(高木 愛)
 Ⅱ 最初の1週間と学校行事(高木 愛)
 Ⅲ 学級開きにおけるポイント(池西郁広)
 Ⅳ はじめての授業参観・学級懇談会のアイデアとポイント(谷本里都子)
 Ⅴ 子どもとのかかわり(山本木ノ実)
 Ⅵ 気になる子どもへの支援(山本木ノ実)
 Ⅶ 保護者とのコミュニケーション-よりよい関係を築くために-(田﨑伸一郎)
 Ⅶ 初任者教員の抱える悩みと対処法(山本木ノ実)
第4章 先生になるということ-自らを磨き、めざす教師像へ-
 Ⅰ 学校という組織の中で働く(大西孝司)
 Ⅱ 充実した教員生活のために(山下隆章)
 Ⅲ 教員としてのモラル-信用失墜行為の禁止-(田﨑伸一郎)
 Ⅳ 教師に絶えず求められる研究と修養(植田和也)
 Ⅴ 教育者としての道(植田和也)
 Ⅵ これから始まる教員生活における「教師の学び」
  (1霜川正幸 2土田雄一 3藤井善章 4佐瀬一生 5神居 隆)
あとがき(谷本里都子)

【著者紹介】
〔編著者〕
谷本 里都子
田﨑 伸一郎
植田 和也
高木 愛
山本 木ノ実