地域にみる讃岐の近世 第2版
ISBN:9784863870796、本体価格:2,000円
日本図書コード分類:C1021(教養/単行本/歴史地理/日本歴史)
256頁、寸法:148.5×210×11mm、重量282g
発刊:2016/12

地域にみる讃岐の近世 第2版

【あとがき】
 今から35年前に讃岐の高松へやってきた私は、日本史を専攻している関係から、讃岐の地域史の研究に取り組み始めました。自治体史の編纂や讃岐地域史の編集に際して、とくに讃岐近世史の分野について概論的な文章を書いてきました。以前からこれらのものを、1冊にまとめてみたいという気持ちがありました。しかし時間的な余裕がなく延び延びになっていましたが、この3月に香川大学を定年退職するときを機会に、思い切ってまとめることにしました。
 これまで執筆してきた概論的な讃岐近世史の内容は、大きく分けると高松藩・丸亀藩などの藩政史の分野と、それ以外の高松城下町・農村・金毘羅・廻船などになりますが、今回は藩政史の分野以外のものを取り上げました。収載予定のものを整理してみますと、町と村と島に分けることができましたので、「高松城下町と金毘羅」、「村と農民」、「塩飽と小豆島」の3部構成にしました。
 したがって、本書の表題『地域にみる讃岐の近世』は、讃岐近世の地域ごとの、課題とすべき歴史について述べたものではなく、便宜上3つの地域に関係した歴史の一部を述べたものに過ぎません。讃岐の近世における各地域の歴史の一コマという意味に理解していただけたら有り難いと思っています。本書がこれからの讃岐近世史の研究に少しでも役に立つことができれば、望外の喜びです。
 刊行に当たって、元の文章に手を入れて訂正・補筆をし、また書き下ろして補充したところがあります。本書の内容を構成している項目の発行所等や掲載書は次のとおりです。

第1部 高松城下町と金毘羅
 1章 高松城下町と問屋町人
  1 高松築城と城下町
    (香川県『香川県史3・近世Ⅰ』平成元年、『香川県史4・近世Ⅱ』平成元年)
  2 高松上水道と城下町の災害
    (『香川県史4・近世Ⅱ』)
  3 高松城下町の取引
    (「新湊町」と「城下の商業」を改題。『香川県史4・近世Ⅱ』)
    付論 高松藩校講道館
    (『香川県史3・近世Ⅰ』平成元年)
 2章 金毘羅と高松藩
  1 金毘羅門前町の成立
    (琴平町『町史 ことひら・近世近現代通史編』平成10年。但し「門前町と『社領法度』」は書き下ろし)
  2 金毘羅門前町の商業
    (『町史 ことひら・近世近現代通史編』)
  3 別当金光院
    (「金毘羅の統治」を改題。『町史 ことひら・近世近現代通史編』)
  4 高松藩と御札守所
    (「金毘羅と高松藩」を改題。『町史 ことひら・近世近現代通史編』)
    付論 金毘羅丸亀街道
    (「金毘羅への道―金毘羅参詣と丸亀街道―」を改題。四国地区国立大学放送公開講座『道の文化』平成3年。但し「大原東野」は書き下ろし)
第2部 村と農民
 3章 村と検地
  1 近世初期の検地
    (大川町文化財保護協会『郷土研究資料集第14号』昭和59年)
  2 村の成立と村高
    (善通寺市『善通寺市史・第二巻』昭和63年、飯山町『飯山町史』昭和63年)
  3 香東川の「芦脇水論」
    (「香東川の井関―芦脇井関水論史料(寛政二、三年)の紹介―」を改題して一部省略。科学研究費報告書『郷土の自然教材による環境教育の実施研究』昭和62年)
    付論 下吉田村永井の馬継所と茶屋
    (『善通寺市史・第二巻』)
 4章 農民と軍事
  1 農民の階層
    (寒川町『寒川町史』昭和60年、『飯山町史』)
  2 砂糖生産と農民(『寒川町史』)
  3 軍事と農兵
    (『善通寺市史・第二巻』、『飯山町史』)
第3部 塩飽と小豆島
 5章 塩飽廻船と勤番所
  1 塩飽の廻船業
    (「近世前期の塩飽廻船」を改題。香川大学教育学部『瀬戸大橋架橋に伴う地域社会の変容に関する総合的研究』平成元年。但し「『客船帳』にみる塩飽廻船」は書き下ろし)
  2 塩飽勤番所の創設
    (文化庁『広域遺跡保存対策調査報告書6』昭和60年、『香川県史4・近世Ⅱ』)
    付論 瀬戸内廻船業の発展
    (「近世廻船業の発達」を改題。瀬戸内海環境保全協会『瀬戸内海の歴史と文化』昭和53年)
 6章 小豆島の石丁場跡と災害
  1 大坂城石丁場跡
    (科学研究費報告書『郷土を中心とした社会・自然環境教育の教材とカリキュラム開発』昭和59年)
  2 近世小豆島の災害
    (「近世小豆島災害史料」を改題。香川大学小豆島災害調査団『小豆島災害調査報告書―7617台風による災害―』昭和52年)

 本書への掲載に当たり、発行所等からは快くご了解を、また口絵・挿し絵の掲載に、ご所蔵の方々のご快諾をいただきました。そして本書は多くの近世史料を基にして書かれていますが、所蔵されている方々には史料調査でお世話になりました。これらの発行所等や多くの方々に、深く感謝を申し上げます。
   平成15年3月20日  木原 溥幸

【目次】
第1部 高松城下町と金毘羅
 1章 高松城下町と問屋町人
  1 高松築城と城下町
     高松城  城下町の整備  城下町の拡大  町年寄と御用達
  2 高松上水道と城下町の災害
     上水道の設置  新井戸  宝永四年の大地震  享保三年の大火  安政元年の大地震
  3 高松城下町の取引
     新湊町の諸問屋  問屋の営業と「諸入目」  「砂糖一件御用向」と砂糖取扱人  材木問屋と煙草問屋
   付論 高松藩校講道館
    講堂の創設  講道館の設立  聖廟の建設  明善郷校の設置
 2章 金毘羅と高松藩
  1 金毘羅門前町の成立
     仙石秀久の寄進  生駒家の寄進と保護  門前町と「社領法度」
  2 金毘羅門前町の商業
     紙取引の取り締まり  藍玉代金の訴訟  米高値と米屋  呉服株の設定  魚会所の設置  内町の融通会所
  3 別当金光院
     朱印地金毘羅と高松藩  「権太夫・内記一件」  金光院の参府と朱印改め  金光院の支配  金毘羅の財政
  4 高松藩と御札守所
     松平賴重と金毘羅  高松藩の寄進と統制  大坂蔵屋敷の御札守祠  江戸上屋敷の御札守所  宇足津寄洲の寄付
   付論 金毘羅丸亀街道
    金毘羅信仰  丸亀街道  灯籠・丁石と与北の茶堂  新堀湛甫と江戸講中灯籠  大原東野
第2部 村と農民
 3章 村と検地
  1 近世初期の検地
     太閤検地  有馬家の慶長・寛永検地帳  高松藩・丸亀藩の寛文検地  寛文検地帳
  2 村の成立と村高
     善通寺地域の村  飯山地域の村  善通寺地域の村高
  3 香東川の「芦脇水論」
     香東川と「大禹謨」  香東川の井関  寛政二、三年の芦脇井関   香東川用水改良事業
   付論 下吉田村永井の馬継所と茶屋
    馬継所  茶屋  茶屋の修理と払い下げ
 4章 農民と軍事
  1 農民の階層
     生駒時代の神前村蓮井家  正保元年の坂本郷「本百姓」  農民の階層分化  幕末の階層構成
  2 砂糖生産と農民
     砂糖の製造  砂糖車の売買  砂糖の取引
  3 軍事と農兵
     高松藩の農兵  丸亀藩の「軍用夫役」と「固場所」  鵜足郡の鉄砲等調査  「軍用入目」
第3部 塩飽と小豆島
 5章 塩飽廻船と勤番所
  1 塩飽の廻船業
     塩飽と西廻り  塩飽廻船の活躍  塩飽の城米船  「客船帳」にみる塩飽廻船
  2 塩飽勤番所の創設
     塩飽と人名制  年寄役の地位  水主百姓の訴えと大工一揆  寛政元年の「訴願」  年寄役の交代  勤番所の設置
   付論 瀬戸内廻船業の発展
    近世海運と弁才船  海上交通の発達  塩飽船持ちと運賃積・買積  北前船と瀬戸内の港  瀬戸内の廻船と北国行  「瀬戸内海廻船」
 6章 小豆島の石丁場跡と災害
  1 大坂城石丁場跡
     大坂城築城と小豆島  岩谷石丁場  土庄石丁場  小海石丁場  福田・家浦・大部・石場・千振の石丁場  築城後の御用石
  2 近世小豆島の災害
     災害の概要  中期の池田村の普請  弘化四年の大洪水・山崩れ  幕末の旱魃と長雨
 あとがき

【著者紹介】
〔著者〕
木原 溥幸