マルティン・ルターとその世界
ISBN:9784863870802、本体価格:2,000円
日本図書コード分類:C1016(教養/単行本/哲学心理学宗教/キリスト教)
528頁、寸法:148.5×210×29mm、重量750g
発刊:2016/12

マルティン・ルターとその世界

【内容紹介】
「神は至高者であり、神より上には何ものも存在しないゆえ、神はご自身の上を見ることはできない。また、神に等しき何ものも存在しないゆえ、ご自身の横を見ることもできない。必然的に神はただご自身とその下を見る。そして誰かがご自身の遥か下、底深いところに低くいればいるほど、いっそうその人を顧み給う。」ルター『マグニフィカート』から
 本書は、マルティン・ルターに関する私の過去の文章をまとめたものです。その中には一見、ルターと関係ないと思われる文章も含まれていて、奇異に感じられる方もおられることと思います。また論文だけでなく、心象を記したものや雑文も多く含んでいます。その点について、はじめに少し説明をしておきます。
 私はルターの著作を歴史研究の対象としてよりも、むしろ心の糧として読んできました。冒頭に記した『マグニフィカート』の文章に初めて接したとき、衝撃的な印象を受けました。ルター以外のことを考えている時も、心の底でこの文章は通奏低音のように響いていました。ルターを偶像化するつもりは毛頭ありませんし、ルターはユダヤ人問題をはじめいろいろな失敗をおかしたことも知っています。しかしそれ以上に、私にとって、ルターは教えられることの多い存在でした。ルターは巨人です。その全体をとらえることはできませんし、その一部ですら、理解していないかもしれません。直接・間接を通じてルターから学んだことをルターへの感謝とともに、私の「ルターの世界」としてまとめたのが本書です。本書が、少しでもルターに関心や興味をもたれるきっかけになれば、感謝です。

【目次】
第Ⅰ部 マルティン・ルター
第1章 ルターと乞食
  第1節 近世以前の乞食観
  第2節 ルターの乞食観
  第3節 ルターの自己理解
第2章 キリスト者の自由
  第1節 歴史における自由
  第2節 キリスト者の自由
第3章 マルティン・ルターと死者の「死」
  第1節 煉獄を中心とする生者と死者の係わり
  第2節 対カトリック論争書における死者
  第3節 書簡における死生観
  第4節 告別説教における死生観
  第5節 『卓上語録』における「死者」と悪魔
第4章 「信仰」宗教の成立
  信仰と主観性の危機
  第1節 親鸞における信心
  第2節 ルターにおける苦難と信仰
  第3節 「信仰」宗教の成立
  「信仰」宗教における私と他者の発見
第Ⅰ部 附論 「死の意識の古層」の克服
  第1節 ヨーロッパにおける「死の意識の古層」
  第2節 ルターにおける「死の意識の古層」の克服
  第3節 日本の仏教における「死の意識の古層」
  第4節 親鸞における「死の意識の古層」の克服
  第5節 おわりに ― 孤独と無常
第Ⅱ部 ドイツ敬虔主義
第5章 敬虔主義研究史(1990年まで)と課題
第6章 ルターとシュペーナー ―万人祭司主義と霊的祭司職―
  第1節 ルターの万人祭司主義
  第2節 領邦教会制と万人祭司主義
  第3節 シュペーナーの霊的祭司職
第7章 シュペーナーのErbauung観
  第1節 考察の対象
  第2節 シュペーナーのキリスト教理解と時代認識
  第3節 シュペーナーのErbauung観
第8章 ドイツ敬虔主義の「敬虔の集い(コレーギア・ピエターティス)」観 ―シュペーナーとJ.J.モーザー
  第1節 初期敬虔主義とシュペーナーの「敬虔の集い」観
  第2節 領邦教会制の諸理論
  第3節 モーザーの「敬虔の集い」観
第9章 17世紀末ヴュルテンベルクの終末論
  第1節 シュペーナーの終末論
  第2節 17世紀末のヴュルテンベルク領邦教会
  第3節 急進的千年王国論
  第4節 シュペーナー的千年王国論の受容
第Ⅲ部 近世ドイツの聖職者
第10章 近世ヴュルテンベルクの聖職者
  第1節 近世ヴュルテンベルクの教会制度
  第2節 近世ヴュルテンベルクの支配層
  第3節 ホッホシュテッター家の場合
第11章 J.R.ヘディンガーの聖職者理想論
  第1節 トーマス・アプトの聖職者論
  第2節 ヘディンガーのErbauung観
  第3節 ヘディンガーの聖職者論
第12章 リーガ時代におけるヘルダーの人間性理解と聖職者論
第Ⅲ部 附論 シュライエルマッハーの宗教理解
  第1節 シュライエルマッハーの『宗教論』
  第2節 宗教と形而上学・道徳
  第3節 宗教の本質
  第4節 宗教と社会
  第5節 シュライエルマッハーと新プロテスタンティズム
第Ⅳ部 芸術
第13章 心象のケルン大聖堂 ―人はなぜ高さを求めるのか―
第14章 ローテンブルクのリーメンシュナイダー
  第1節 木彫祭壇と『聖なる血の祭壇』
  第2節 ダ・ヴィンチ『最後の晩餐』
  第3節 『聖なる血の祭壇』
  「私たち自身の中のユダ」
第14章 附論 リーメンシュナイダーの生涯と内面性
第15章 『ファウスト』におけるオイフォーリオン悲劇について
第16章 ドストエフスキー『白痴』におけるふたつの愛
あとがき
参考資料「ヴュルテンベルク・ホッホシュテッター家」
索引

【著者紹介】
〔著者〕
中谷 博幸