金毘羅参詣 続膝栗毛(複製)
ISBN:9784863871489、本体価格:2,700円
日本図書コード分類:C1091(教養/単行本/文学/日本文学総記)
170頁、寸法:14.8×21×10mm、重量260g
発刊:2021/06

金毘羅参詣 続膝栗毛(複製)

【はじめに】
『東海道中膝栗毛』あるいは「弥次さん、喜多さん」といっても、若い世代の人にはあまり知られることのない名前かも知れない。しかし昭和の、またそれ以前の空気を吸った人たちにとって『膝栗毛』、あるいは「弥次喜多」はとても身近な存在だった。活字で『膝栗毛』を読んだことがなくとも、江戸を立ち東海道を旅する二人の旅人が引き起こす数々の失敗談は記憶の中に残しているのが普通だった。
江戸時代の末期、たかだか200年ほど前に『膝栗毛』は最初のベストセラーといえるほど庶民に親しまれ読まれたという。作者の十返舎一九(じっぺんしゃいっく)(明和2(1765)年から天保2(1831)年)は、文筆を業とする最初の職業作家だとする研究者もある。
『東海道中膝栗毛』のあまりの好評に版元(今でいう出版社)は、作者に続編の執筆を懇願する。ここから『続膝栗毛』が始まることとなる。江戸の戯作者(けさくしゃ)十返舎一九は、主人公、弥次郎兵衛と喜多八(北八とも)を大坂(おおざか)から讃岐国(現在の香川県)丸亀を経由し、金毘羅宮に向かわせる。続編『続膝栗毛』の始まりである。その後、二人の騒客が宮島(松島)詣でをした後帰途につき、中山道を東下して江戸に戻るまで20年間20編にわたり『続膝栗毛』は書き続けられることとなった。
そこで本書では、この『金毘羅参詣 続膝栗毛初編(上・下)』文化7(1810)年刊を旅の杖として虚構の世界に遊びながら、一九描くところの江戸時代の金毘羅参詣の実態と、そこに登場する讃州者たちの生活や、話している「さぬきのことば」に注目してみたい。
本書は本編ともいえる『東海道中膝栗毛』に比べて世にほとんど知られることのない『金毘羅参詣 続膝栗毛』(上下2巻)の本文を影印し読者に供することを主な目的とする。
原典の翻字は『帝国文庫』を始め何度か試みられているが、それらを頼りにしなくても、江戸時代の文献に少しでも慣れれば、読み飛ばししながらでも読むことができよう。
本書を手にする方には、それぞれの読み方で『金毘羅参詣 続膝栗毛』の面白さを感じ取っていただければ編者の本望である。
  令和3年4月30日  編者 記す

【おわりに】
『東海道中膝栗毛』の続編として金比羅参詣をする出版があることは、以前から知っていた。本文については、江戸文化や江戸文学に強い関心をもっていた柳田国男や幸田露伴、また帝国文庫などの、活字を通して読むことができた。「四国新聞」でも本文を連載し、近年ではコンピューターのブログや電子書籍でも、その全文を見ることができる。当時、同じ教室であった土屋信一教授から「香川大学に金比羅参詣がないのはおかしいね」といわれ当該の和本を購入したのが今回この本になった。そして創設したばかりの大学院での演習のテキストとして、翻字と解釈を院生と分担しながら隔年で5回ほど学習をしたのが、「続膝栗毛」研究の始まりとなる。
その後、学部学生の卒業論文に研究資料として取りあげる者もあり、研究のテーマとして継続して読解を進めてきた中間発表が、本書となった。語釈を始め不十分な点がまだ多く残されているのだが、一九研究あるいは『続膝栗毛』研究の一歩としてご参考までに供することになれば、これ幸いと版に刻する次第。まずは、ご一笑までに。

【目次】
はじめに
凡例
解説
本文(複製)
おわりに

【著者紹介】
〔著者〕
十返舎 一九
〔編集者〕
柴田 昭二
連 仲友