歴史地理学はこんなにおもしろい─讃岐・阿波の歴史を読みなおす─
ISBN:9784863872165、本体価格:2,500円
日本図書コード分類:C3025(専門/単行本/歴史地理/地理)
164頁、寸法:××mm、重量g
発刊:2026/03

序章:研究の視点と対象地域
歴史地理学は、過去の地理的な景観や地域が、歴史的な時間経過の中でどのように変化してきたかを記述する新しい学問である。私自身は香川県に生まれ、主に香川県と四国山地を中心に活動してきた。地域の地理や歴史、文化にも興味があり、生まれ育った地元が好きで、これらの地域が私の研究対象となった。
地域の歴史を繙くと、古く戦前期から言い習わされてきた見方や物語が現在まで続いている。戦後の研究も、大部分はその延長上で展開されてきた。その後新しく知られるようになった史料や遺物も、古い考え方をもとに解釈されることが多く、新しい見方や展開が少ないように思う。
一方で現代の研究環境は、研究者や研究機関の増加に伴って飛躍的に改善されてきている。最も大きな変化は、インターネットの普及である。その結果、情報や資料へのアクセスが容易になって、遺跡の発掘成果報告書などを誰もが何時でも読むことができるようになった。さらにSNSの発達は、こうした研究成果を個人的に公開し情報発信する道を開いた。
こうした研究環境の急激な変化は、在野の初学者が、学会や研究者の考え方を理解したうえで、自由な立場から研究を行うことを可能にしてきた。これは、所属やしがらみに束縛されない発想での研究を行うことで、これまで予想もされなかった全く新しい論の展開と検証を行い、発表することを可能にした。
しかし、こうした状況を受けて、これまでの通説の検証や見直しが進んだかというと、十分ではない。まだ古い既成観念にとらわれたままの研究が多く、見直されるべき通説等が残されている。したがって新たな発見や提示を行う余地を多分に残しているといえる。
本論文集は、讃岐国と阿波国をフィールドとして私が取り組んできた、自由な研究の成果を纏めたものである。読者の皆さんのご批判とご叱責を仰ぎたい。
【目次】
序章:研究の視点と対象地域
第Ⅰ部:古代の地域構造と条里制
・第1章:『菅家文草』に見る讃岐国府の地理
・第2章:条里遺構の復原的研究―讃岐国阿野郡条里を事例として―
・第3章:阿波国名方郡条里の復原的研究
第Ⅱ部:中世・近世の景観変容
・第4章:中世勝賀城と笠居郷の景観―南海通記叙景―
・第5章:「天正年間古地図」に描かれた笠居郷
・第6章:「海ノ中道」―近世高松の海辺―
第Ⅲ部:資料編
・第7章:翻刻 一向宗 香川郡西笠居村常善寺記録ひかえ
終章 歴史地理学の未来に向けて
初出一覧
【著者紹介】
〔著者〕
泉保 安夫