瀬戸内圏の地域文化の発見と観光資源の創造
ISBN:9784863870048、本体価格:円
日本図書コード分類:C1126(教養/文庫/歴史地理/旅行)
192頁、寸法:148×210×mm、重量g
発刊:2010/03

瀬戸内圏の地域文化の発見と観光資源の創造

【はじめに】
 この報告書は香川大学で人文・社会科学系の教員で組織するチームが瀬戸内海地域の将来を考えながら、現状について考察したものである。島嶼地域は面積が小さい場所である。そこに暮らすということは広い場所で暮らしている時には全く何の制約にもならないことが非常に明瞭な生活上の制約として現れる。水がなかったり燃料に事欠いたりする。島の生活、最も時代を超越して何物にも動じない生活しているように見える場所に、時代の変化が最も鋭敏に現れる。過疎の問題、少子高齢化の問題、限界集落の問題、今私たちが経験し解決を迫られている問題が、すでに数十年前から自分たちの問題であった地域である。島は社会の小さな変化が最も先端的に鋭敏に現れる地域といってもいい。
 今瀬戸内海地域の島は一部の島において、人口の自然減少という現象に直面している。社会移動による人口減少になるのではなくて、死亡によって人口減少が続く状態になっている。このままでいくと社会も人の生活も文化も消滅するとの危機を感じながら暮らす人もあらわれている。自分たちで終わりになるだろうとおっしゃりながら淡々と生きていらっしゃる老人の生活ぶりに接するとその生き方は見事にも思えてくる。

 私たちは別のことを考えねばならない。将来にも人が島に住んでもらいたい。島に生まれた人のUターンを待っているだけではままならない状況である。島に縁もゆかりもない人に住んでもらうことを考えなければならない。そのためには、島を好きになってもらわなければならない。その人は今の島の生活を否定的に考える人ではならない。今いる人の生活を十分尊重した上に自分の楽しみを見つけてもらいたい。島の面白さ、島の歴史の深さ、人々の生活の知恵などに、敬意を払いながら新しい島の姿を描ける人に来てほしい。私たちは島についての情報や考察を発信することは島に興味を持ってもらうことにつながると考えている。興味を持って何度も島に来てもらえる人を増やすことが、遠回りのようで、島に住む人を増やす一番の近道であると考える。
 私たちは、観光が島に来てくれる人をふやす有力な手段であると考えている。観光を切り口に島々の置かれている状況を研究者の目で切り取ったのが本書である。まだ始まったばかりの動きではありますが、長い目で、温かい目で見守っていただければ本当にうれしく思います。
  2010年2月5日  執筆者を代表して  稲田 道彦

【目次】
はじめに(稲田 道彦)
第1章 瀬戸大橋架橋4島の20年(稲田 道彦)
第2章 離島振興と観光(室井 研二)
第3章 直島の事例にみるSNS上に流通する観光情報の類型化(村越 友香・金 徳謙)
第4章 学びの場としての小豆島遍路(大賀睦夫研究室、大賀 睦夫、岡田 佳奈、北出 聖治、久保 由希乃、武市 佳久、津田 裕太、徳島 也、西山 優樹、野口 浩輝、浜西 実咲、水野 晃浩、宮内 崇匡)
第5章 サヌカイト原産地香川県金山の調査(丹羽 佑一)
執筆者紹介

【著者紹介】
〔編集者〕
香川大学瀬戸内圏研究センター
〔著者〕
稲田 道彦
室井 研二
村越 友香
金 徳謙
大賀 睦夫
岡田 佳奈
北出 聖治
久保 由希乃
武市 佳久
津田 裕太
徳島 也
西山 優樹
野口 浩輝
浜西 実咲
水野 晃浩
宮内 崇匡
丹羽 佑一