昭和わたしの証言 Ⅱ
ISBN:9784863870079、本体価格:1,500円
日本図書コード分類:C0023(一般/単行本/歴史地理/伝記)
347頁、寸法:128×182×19mm、重量390g
発刊:2010/08

昭和わたしの証言 Ⅱ

【まえがき】
 「昭和わたしの証言Ⅱ」は、昭和時代の39年の東京オリンピック、45年の大阪万博のころまでを中心に執筆している。特に戦中、戦後の十数年のことは記録も少なく記憶によるところが大きく個人の証言はそれだけ迫力がある。
 先に上梓した「昭和わたしの証言」が歴史にないものも書かれているし、団塊の世代の“戦無派”の人々の証言も“戦中派”と違った内容で知られざる自分史としてよく読まれた。
 昭和の戦時下では、“欲しがりません勝つまでは”の標語がよく知られ、古くからの“撃ちてしやまむ”などが流布したが、戦後は吉田茂首相が全面講和を主張した南原繁東大総長に浴びせた「曲学阿世」の言葉も時代を言い表している。そして首相は“バカヤロー解散”を断行、いつの時代も政治の世界は、われわれの生活の“生き写し”かも知れない。
 いつの時代もそうだが官僚はいろいろと組織や名称などよく変える。警察もかつての内務省管轄から戦後は、国家地方警察と自治体警察になったり戦後の十余年間は大変な時代であった。
 このころ国鉄の宇高連絡船の紫雲丸が高松を出てすぐに僚船と衝突、沈没して168人の死者を出す大惨事となる。また徳島では、その3年後に南海丸が沈没、167人の死者を出した。これが本四架橋へ拍車をかけることになるのである。
 昭和40年代になると、バスのワンマン化が進み、車掌のいないバスになって来る。
 このころからスーパーマーケットが生まれ始め、小間物屋という地域に親しまれた“何でも屋”が消えていく。ミニスカートの時代、消えた角帽なども戦後の世相のひとつであろう。こういう時代の動きは、“わたしの証言”によって垣間見ることが出来るのである。
 このような昭和の余り知られていない世相を書いたのがこの証言の面白さであろう。
 今回も初刊と同じく昭和文化会の西岡幹夫、津森明の両人が友人知己に声をかけてそれぞれの自分史と併せて戦中戦後史を書いてもらった。公の歴史にない事柄も多くみられ、古いことがよくわかる一冊になっていると思われる。文中の一人称は、本著の題名に合わせすべて「わたし」にした。
     平成22年盛夏  執筆者代表  津森 明

【無辜の悲しみ-あとがきにかえて】
 今回、夏の日の盛りでしたが思い立って、引き揚げの町として知られている舞鶴を散策しました。舞鶴は昭和20年11月から13年間、軍人、軍属約48万、一般人約17万の帰国者を迎え、ここには戦争の悲劇、悲惨な引揚げの史実を後世に伝えるため、舞鶴引揚記念館があります。引き揚げの歩み、辛いシベリア抑留生活、慢性的な飢えと衣食住、強制労働、そして帰還と再会などの実態について、当時の数々の遺留品や写真を通して見学し、戦争の悲惨さを再認識しました。
 また、司馬遼太郎の直筆、〝無辜の悲しみ.に感動しました。「20世紀は、近代国家群による蛮行の時代で、それ以前の世界史にはない巨大な不幸をつくりに造った」、「シベリア抑留者のことを思うとき、無限の切なさを覚える」とあります。無辜とは罪のないことで、ここではたまたま生まれ合わせたために、虐待された人々のことをさすのでしょう。
 さらに、引き揚げ運動に当初から貢献された大木英一さんのことは今まで、知りませんでした。昭和20年11月、ただ一人、国鉄大阪駅などに立ち署名運動を呼びかけ、その後、運動は全国に広がったようです。
 さて、「昭和わたしの証言Ⅱ」では太平洋戦争の局面に大転機をもたらしたミッドウェー海戦とその従軍経験、四国の軍都(善通寺、丸亀)や郷土出身の陸海軍人脈、国家の言うことは全て正しいと信じた軍国少女たち、ほとんどの物が配給切符で統制された時代の軍国少年の生活、寂しさ、飢えと不潔に耐えた学童疎開と広島の黒い雨、無蓋列車による満州からの逃避行と引き揚げ船による命がけの帰国、等々、当時の状況や艱難な思い出が生き生きと綴られています。
 そして、現代はよい面も多いが、日本人的美徳の数々が抜け落ちている。また手本は二宮金次郎と述べられていますが、確かに現在はよいものを何か見失ったように思えてなりません。本書がわが国の昭和期を検証し、未来を考える縁となれば望外の幸せです。
 最後に、ご多用中、ご執筆いただいた各位に深甚なる謝意を表すると共に、厚く御礼申し上げます。
    平成22年7月吉日  執筆者代表  西岡 幹夫

【目次】
まえがき(津森 明)
教職への道(出石 一雄)
戦時下における一つの出合いと別れ(伊藤 逸夫)
戦争にふりまわされた時代(帰来 冨士子)
大東亜戦争と国民学校の一児童(國重 昭郎)
貧困から高度成長へのパラダイムシフト(小林 宏暢)
人生は「タラ」「レバ」(近藤 元治)
昭和を生きて(武田 幸栄)
九歳の戦場(竹中 生昌)
わたしの昭和(多田野 榮)
戦中、戦後を生きる(津森 明)
戦後の復興期の中学、高校で学ぶ(西岡 幹夫)
昭和・一部平成 わたしの証言(幡 慶一)
国民学校生徒の回想(前川 清)
いい時代を生きて喜ぶ(三好 保)
打ち上げ花火と高松空襲(山本 正幸)
二十歳までは戦争の時代(山本 靖代)
ミッドウェー海戦(吉井 輝雄)
『尊尊我無』(和田 弘毅)
執筆者一覧
無辜の悲しみ-あとがきにかえて(西岡 幹夫)

【著者紹介】
〔編著者〕
津森 明
西岡 幹夫
〔著者〕
出石 一雄
伊藤 逸夫
帰来 冨士子
國重 昭郎
小林 宏暢
近藤 元治
武田 幸栄
竹中 生昌
多田野 榮
幡 慶一
前川 清
三好 保
山本 正幸
山本 靖代
吉井 輝雄
和田 弘毅