昭和わたしの証言 Ⅲ
ISBN:9784863870192、本体価格:1,500円
日本図書コード分類:C0023(一般/単行本/歴史地理/伝記)
300頁、寸法:××mm、重量g
発刊:2012/01

昭和わたしの証言 Ⅲ

【まえがき】
 「光陰矢のごとし」というように月日の経つのは早いものである。第二次世界大戦が終結して早くも66年を経た。わが国の昭和という年号が平成になってからも23年も経ている。
 この「昭和わたしの証言」も今回で3冊目となってしまった。多くの友人知己が筆を起こして執筆、歴史書に書かれていない知られざる昭和の出来事をも執筆、後世に残る記録ともいえる文を寄せていただいた。
 昭和という年号は史上初めて60年間ほど刻んだが初めの20年間は戦雲たなびく「欲しがりません勝つまでは」の時代であった。しかし日本は20年8月15日に無条件降伏、連合国に6年間も支配されたが講和条約によって以降、50数年平和を守り続けている。
 昨今、世は電脳の発達により自由、平等、便利な社会が続いているが反面、わがままな傾向が一層強くなり親切、孝行、優しさといった風潮が消えつつある。
 吉田松陰の辞世の和歌のように「親思う心に勝る親心」といった孝行というのも希薄になっている。古代中国の古典にあるように「三(さん)枝(し)の礼(れい)」という長幼の序も希薄になっていて礼節など「どこ吹く風」といった昨今である。三枝の礼というのは子鳩は枝に留まるとき常に親鳥より下の枝に留まるということからの出た言葉である。
 昭和初期の不便な時代に幼、少年期を送ったこのシリーズを今回執筆した人々はみんな「欲しがりません」の時代を生きてきた人々であり、その証言は後世に伝えたい生の証言であろう。
 各人の昭和の記録はぜひとも後世に伝えたいと思う。各人の書いた証言はまさに「昭和の歴史」といえよう。わたしの企画、出版した「昭和の忘れ草」全4巻と共にお読みいただきたい。
   平成23年晩冬  執筆者代表  津森 明

【あとがき】
 今回は香川県外からも、また牧師や神父をはじめ多くの方々から原稿を戴いた。
 幼年時代、軍国少年の思い出、学徒動員の実態などを軍歌に託して語られた雨宮、笹本証言を筆頭に、出身地の県内では高松市、善通寺市、宇多津町、さぬき市、佐柳島(多度津港から約5キロの海上にある塩飽七諸島のひとつ)、県外では大阪、岡山、広島、九州、さらに上海、台北、旧満州関東州などの外地での貴重な証言ばかりである。
 台北市でも終戦前には灯火管制、米国の空襲、児童の集団疎開があったが終戦後は他の外地と違って台湾人は日本人に危害を加えることはなかったし上海でも終戦後も半年ばかり小学校に通うが特に危害はなかったという。一方、撫順市ではソ連の空襲が始まると混乱をきわめ、また終戦後は中国兵が日本人に銃を向けるなど目に余る行為があったらしい。中国吉林省南西部にある通化市では千人以上の日本人を虐殺する事件が昭和21年2月9日に起こり、このような敗戦国民を虐殺した事件は世界にないのではないかと証言されている。なお、この宮武証言では、貴重な地図ならびに筆者自筆のスケッチの多くは枚数の関係で四枚のみしか掲載できずおわびしたい。
 昭和19年6月、徳之島沖を航海中の輸送船、富山丸がアメリカ潜水艦の攻撃を受け、沖縄守備要員の3700余名が犠牲となった。今もなお遺族が集い、徳之島でその慰霊祭が行われる。桑島証言では富山丸に乗船した父親の無念の戦死、最後の瞬間について述べられている。
 ソロモン群島の一つブーゲンビル(ブ)島で起きたウェーバー事件、戦没者慰霊施設であるウェーバー神父記念ホール設立の経緯などの米本証言を知り、ブ島との友好関係が今後とも進展することを期待したい。
 軍都広島とヒロシマに変容した日についても語られ、原発は「昭和」の問題でヒロシマへの裏切り、ヒロシマからフクシマへと続くと内藤証言は言う。
 1960年代を回想した高橋証言では「人間の不安は科学の発展から来る。進んで止まることを知らない科学はかつてわれわれに止まることを許してくれたことがない。(中略)どこまで伴れて行かれるか分からない。実に恐ろしい(行人)」と夏目漱石の言葉をかりて感慨を語られている。わたしも漱石のこの言葉で本稿を終えたい。
 最後に、ご多用中、ご執筆いただいた各位、ならびに6名の執筆者をご紹介下さった大阪香川県人会、和田弘毅会長に深甚なる謝意を表すると共に美巧社の田中一博氏にご高配を賜り厚く御礼申し上げたい。
  平成23年11月吉日  編集者代表  西岡 幹夫

【目次】
まえがき(津森 明)
昭和の思い出(雨宮 惠二)
ふるさとに感謝(和泉 幸男)
昭和二十年八月後 数年間の社会の一断面(糸山 東一)
昭和を生きてきて(井原 彰一)
わたしの小学校時代(岩瀬多喜造)
平成辛卯 昭和を思う(片山 泰弘)
生への畏敬 生きる力 我が青春時代(國重 昭郎)
佐柳島(黒田 一吉)
今は感謝と奉仕の「しぼんでたまるか期」(桑島 正道)
「戦争末期の悲しい思い出」~神様助けて下さい~(湖﨑 武敬)
終戦後日本の復興(小林 宏暢)
軍歌少年の決意(笹本 正樹)
わたしの「三丁目の夕日」(塩田 博文)
耳を奏でる自分史の曲(高徳 敏弘)
六十年代の回想(髙橋 幹)
戦時中の記憶をその後に生かして(武田 和久)
戦後の変革期を生きる(津森 明)
広島がヒロシマに変容した日(内藤 達郎)
新制大学の教養課程(西岡 幹夫)
在所の暮らし(藤井 洋一)
旧関東州で生まれて(日露戦争で百年間の日本の租借地)(宮武 正弘)
昭和わたしの証言(村井 直樹)
よく遊びよく学んだ学生時代(山本 正幸)
喰い違った証言(米本 仁)
執筆者一覧
あとがき(西岡 幹夫)

【著者紹介】
〔編著者〕
津森 明
西岡 幹夫
〔著者〕
雨宮 惠二
和泉 幸男
糸山 東一
井原 彰一
岩瀬 多喜造
片山 泰弘
國重 昭郎
黒田 一吉
桑島 正道
湖﨑 武敬
小林 宏暢
笹本 隆志
塩田 博文
高徳 敏弘
髙橋 幹
武田 和久
内藤 達郎
藤井 洋一
宮武 正弘
村井 直樹
山本 正幸
米本 仁