昭和わたしの証言 Ⅳ
ISBN:9784863870369、本体価格:1,500円
日本図書コード分類:C0023(一般/単行本/歴史地理/伝記)
352頁、寸法:129×183×19mm、重量390g
発刊:2013/08

昭和わたしの証言 Ⅳ

【まえがき】
 「昭和わたしの証言」も今回の上梓で4冊目となった。昭和の年号になってから63年も続き、この間、満州事変、支那事変、大東亜戦争と戦争が相次いだが昭和20年8月15日に終戦となり、以来平和が続いている。
 平成21年になって「あの戦争中のことを忘れてはなるまい」と昭和戦前の者たちが話し合い「昭和わたしの証言」という冊子を上梓することになった。
 最近は太平洋戦争とか言っているが往事は大東亜戦争と言い、小学校も国民学校と称するなど〝忘れられた言葉〟が多くみられる。
 教科書も国民学校では1年生の最初に「アカイ アカイ」という書き出しで始まったが昭和15年までは「サイタ サイタ サクラガサイタ」であった。
 当時、自動車はめったに走っておらず自転車が少しあるぐらいの昭和時代であり、特に大東亜戦争といわれた時代は、物資を運ぶのはほとんど荷車だし3輪車(オート3輪)であった。乗合自動車といったバスはほとんどなかった。
 高松には昭和になって琴電の電車が開通、仏生山 塩江間にはガソリンカーが走ったが、戦争となり、わずか10数年でガソリン不足などからガソリンカーは廃線となった。
 昭和16年12月8日、大東亜戦争が勃発、昭和といえば〝戦争〟を思い出すのは今日、75・6歳以上の人であろう。
 米軍による高松空襲では市民1000人以上が犠牲になっているが今日の人は詳細なことは知らない。外地からの復員といっても若い人には理解出来ないことが多い。そういう点からもこの〝わたしの証言〟は意義あるシリーズであろう。
 本シリーズのタイトルを「昭和わたしの証言」としているのは、実際に体験した人の感想も入れての〝史書〟として残ればという思いからである。
 私は、平成12年から同志とともに「昭和の忘れ草」という本も4冊出しており、忘れられた事柄を活かしているつもりである。
 古いことをよく知ること、「温故知新」こそ大切であることを実感したいものである。
   平成25年盛夏  高松短期大学名誉教授 津森 明

【あとがき】
 今回は16名の執筆者から原稿を戴いた。出身県別にみると、香川が6名、その内、三豊市が3名と多く、岡山4名、佐賀3名、山口2名、東京の1名となった。
 本著は自分史的な「昭和の証言」であるが、外地での生活や瀕した危機をもとに書かれたものが多い。今回も中国の撫順市、通化市、また、山西省の大原市、全羅南道の光州からの体験談があり、心打たれた。大原市は晋の時代から栄え、李白の生まれ故郷でもある。ここでの戦争が山西残留日本兵問題として取り上げられ、映画「蟻の兵隊」として公開されるという。
 父親の戦死、東京大空襲罹災による親戚1家の死、海軍飛行予科練習生へ入隊、ばあちゃんの讃岐うどん、足の病いからお笑いの人生へ、さらに、昭和30年前後、早くから親元を離れ遠く東京で学んだ中高時代の経験、アメリカでインターン(臨床研修)の体験、当時の我が国の医学教育の様子、日中関係史の諸断面、伝えたいこと、など証言は続く。
 大森証言では、手伝いも遊びもいろいろ工夫して育った少年期を回顧し、「人間は本能的に危機感がある方が奮起し、活力があり、発展するであろう」と述べ、佐藤証言では日本人が忘れかけている神仏への信仰を挙げ、宗教的情操教育の必要性を説く。また、女性は家庭を守るのが美徳という時代に育ち、夫が残したインドネシアの会社をさらに発展させ、同国の大臣表彰を受けた女傑、白崎証言は確かに迫力がある。
 広島原爆の際、中学の同級生136名が死亡し、自分を含め数名が僅かな差で死を免れたという細川証言では、「彼らの生死の差はなんだったのか」、「神がお決めになったでは済まない」、そして、「ただ、偶然によって生き延びるだけではないようにしなくてはならない」と述べる。同感である。
 最後に、執筆者各位、また、執筆者を紹介下さった糸山東一香川大名誉教授、和田弘毅大阪香川県人会長に深甚なる謝意を表したい。
   平成25年7月吉日 編集者代表  西岡 幹夫

【目次】
まえがき (津森 明)
所感、日中関係の諸断面―小学校社会科の日中戦争の扱いを焦点にして― (糸山 東一)
そこは戦地の片隅であったのか (大西 浩子)
昭和史の証言(大東亜戦争、戦前、戦中、戦後の体験談) (大森 正樹)
昭和三十年前後の東京学生生活 (小幡 邦彦)
足の病い(昭和)からお笑い人生(平成)へ (木村 斉)
わが家族・わが友人 (佐藤 元信)
昭和・一部平成 わたしの証言 (佐名木 定夫)
昭和の証言 (白崎 満千子)
昭和四十年代の香川を取材して (滝本 清文)
昭和わたしの証言 (土田 潤一郎)
医学部へ、屈託なく学び、そして遊ぶ (西岡 幹夫)
昭和わたしの証言 (古川 幸枝)
母と子の分水路 (細川 清)
おもいで (松田 美奈子)
再度、通化事件を思い、考え、両親に感謝したい (宮武 正弘)
昭和わたしの証言 (矢野 博英)
執筆者一覧
あとがき (西岡 幹夫)

【著者紹介】
〔編著者〕
津森 明
西岡 幹夫
〔著者〕
糸山 東一
大西 浩子
大森 正樹
小幡 邦彦
木村 斉
佐藤 元信
佐名木 定夫
白崎 満千子
滝本 清文
土田 潤一郎
古川 幸枝
細川 清
松田 美奈子
宮武 正弘
矢野 博英