教室の学びを支援する 英語科教育法概論 自立的な学習者を育てる「教育方法」の研究
ISBN:9784863871441、本体価格:1,500円
日本図書コード分類:C1037(教養/単行本/社会科学/教育)
150頁、寸法:148.5×210×10mm、重量242g
発刊:2021/03

教室の学びを支援する 英語科教育法概論 自立的な学習者を育てる「教育方法」の研究

【はじめに】
 学習指導要領は戦後まもなく試案の形で作られた後ほぼ10年おきに改訂されていますが、外国語(英語)教育も改訂に合わせて様々な変更・改善がなされています。従ってまず念頭に置かなければならないのは、小中高を問わず学習指導要領の記載内容を常に確認しておくことです。もし自分が児童から高校生まで受けてきたそのままに将来教員となった時に指導しようとすると、教育課程の変化に対応できずうまくいかない可能性が生じるでしょう。令和2年(2020年)度より年次進行で小・中・高等学校で施行される新学習指導要領(文部科学省:2018,2019)の中でも、情報化・グローバル化の進展、急激な社会的変化とともに英語教育は大きな変革が求められています。新学習指導要領では小中高を通じて外国語科・外国語活動の目標の中に「外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方」という表現が共通して使われていますが、その解説文には外国語が、言語という道具を越えて教育の重要な一翼を占めるに値する要素が記されています(文部科学省,2019,12-13)。それを私なりに言葉を加えて表現すれば以下のようになります。
・事象を自分本位の視点のみで捉えるのではなく、周りの社会や世界と関わる中で養われる広い視野も使って捉えること。
・万人が自分と同じである(べきである)と考えるのではなく、相手が持つ様々な背景に十分配慮すること。
・行動や活動を行う時には、その目的や場面・状況をしっかり設定又は把握し、それに適応する形で行うこと。
・自分が既に持っている知識や概念に囚われて、それに反する(ように見える)情報を却下するのではなく、一度自分の中で内容を精査する余地を残すこと(結果として受け入れる・受け入れない等の判断をするのはその精査の後で)。
・情報を全てそのまま吸収して受け入れるのではなく、自分が既に持っている情報や概念と関連づけながら整理・精査する中で、自分の考えを形成・(必要に応じて)再構築すること。
これらは外国語科が学校教育の一教科として存在すべき重要な要因の一つだと言い換えることもできるのではないでしょうか。
 また世間一般で「コミュニケーション」というカタカナ語は、口頭言語用の表現として使われる傾向があります。しかし前述目標では「コミュニケーションを図る資質・能力」という表現も共通して使われ、その解説文の中で「外国語の音声や文字を使って実際にコミュニケーションを図る資質・能力」「聞くこと、読むこと、話すこと、書くことによる実際のコミュニケーション」と明示されています(文部科学省,2019,11-12)。従って「読むこと」「書くこと」もコミュニケーションの重要技能であるべきであるとともに、聞き手を無視してただ一方的に話すことはコミュニケーションではない、とも言えます。その意味でコミュニケーションとは1つの技能だけで成立せず、複数技能が双方向的に関わることによって初めて成立することも忘れてはならないでしょう。
 本書は2020年3月に発刊された『小学校英語教育概論』の中・高等学校版として編まれています。「中・高等学校教員養成課程外国語コアカリキュラム」に対応して編集されており、将来の中学校・高等学校英語教員として必要な基礎知識・情報を取り上げています。その上に各執筆者の様々な校種での実践経験や専門知識に基づく記載を加えた編集となっています。本書が中学校・高等学校英語教育の発展の一助となることができれば幸いに思います。
令和3年(2021年)3月 中住 幸治

【目次】
はじめに
第1課 学習指導要領の中心概念―コミュニケーション能力と言語活動―
第2課 英語教育目的論・指導計画・達成目標
第3課 「聞くこと」と「読むこと」の指導
第4課 「話すこと[やり取り][発表]」と「書くこと」の指導
第5課 領域統合型の言語活動の指導
第6課 英語・言語の特徴に関する指導
第7課 教科用図書と教材研究及びICT等の活用
第8課 異文化理解に関する指導
第9課 ALT等とのティーム・ティーチング
第10課 生徒の習熟度や特性に応じた指導
第11課 授業づくり(1) 教授法
第12課 授業づくり(2) 学習指導案の書き方
第13課 学習評価:『CAN-DOリスト』の形での学習到達目標設定とその評価
第14課 第二言語習得研究を英語教育に生かす
第15課 学習指導要領の構造
 COLUMN
   ① 中学校瞬間英作文、学習活動から言語活動につなげる実践の工夫
   ② 中学校 言語行動につながる言語活動の実践と工夫
   ③ 中学校 小学校英語指導に期待すること
   ④ 小学校 小学校から中学校へ期待すること
   ⑤ 中学校 日英語の違いに着目して(現在進行形の指導から)
   ⑥ 高等学校 高等学校教員に求められるもの
引用・参考文献
あとがき
執筆者一覧

【著者紹介】
〔編集者〕
中住 幸治
永尾 智
ポール バテン
齋藤 嘉則
〔著者〕
大西 範英
久保 孝彰
伊瀨 吏沙
橋本 美穂
福本 香緒里
畠山 喜彦