香川県伝統の食文化「讃岐うどん」の継承と発展
ISBN:9784863872172、本体価格:2,000円
日本図書コード分類:C0063(一般/単行本/産業/商業)
168頁、寸法:183×257×9.5mm、重量445g
発刊:2026/02

香川県伝統の食文化「讃岐うどん」の継承と発展

【はじめに】
筆者は多くの讃岐人がそうであるように幼い頃より重厚なうどん好きである。一介の鉄道マンとなってからもそれは変わらず、自ら手をあげて「讃岐うどん」の世界に飛び込んだ。ただ、そこは筆者の想像を遥かに超えた世界で、普通では経験することのできない多くの体験や事柄を通じて「うどん」の奥深さに触れるとともに、多種多様な方々に出会うことができたことは、誠に幸運なことであった。
筆者は1998年四国旅客鉄道㈱のベンチャー会社㈱めりけんやの社長に就任し、2002年にはセルフ店タイプの讃岐うどん店で首都圏進出を果たした後、県外の大学や各種の団体の依頼に応じて讃岐うどんの事業者、経営者としての経営戦略などについての講話を続けていた。そんな依頼の中には単に事業経営の話だけでなく、讃岐うどんそのものや業界、香川県内のうどん事情についても説明を求められる場合もあった。そこで「うどんとはそもそも何か?どこから来たのか?いつ生まれたのか?」「讃岐うどんとは何か、なぜ、いつから全国的に有名になったのか、香川県のうどんを食べる習慣や文化はどのようなものか、それはいつから生まれたのか」など様々な疑問に答えるべく資料を探し始めた。本書は、筆者が香川県外の方々に「讃岐うどん」について説明したり、講話をしたりするために資料を集め始めたのがきっかけである。
2006年頃から縁があって、中国やシルクロード上の国々を訪ねてその地方のめん類を体験したり、中国のめん類の研究者や面点師達と交流を重ねた。また香川県観光協会などが主催した「世界麺フェスタ2008inさぬき」の麺関係分科会でその開催運営に努め、さらにその後発足したさぬきうどん振興協議会で「年明けうどん」の普及に努めたりした後、さぬきうどん研究会のお手伝いもすることとなり、2012年から副会長を引き受けることとなった(本書末に「筆者のうどん関係遍歴」掲載)。その後、創立者の真部正敏会長の体調がすぐれないこともあって2014年には会長代行、2016年からは会長を務めることになった。
筆者はさぬきうどん研究会の副会長になったあたりから、いきなり会務の全てを背負うことになり、県外も含めて各種の団体から、全国的に有名になった「讃岐うどん」について講演依頼が来ると、講師として講演するようになった。
講演依頼は一般の団体から毎年数回要請があり、「讃岐の伝統の食文化『讃岐うどん』」や「讃岐うどんの歴史と文化」という演題で対象団体の要請に合わせて内容を調整しながら講演してきた。その他「讃岐うどんの源流を訪ねて・シルクロードは麵ロード」という演題での講演も何度か行った。
また、2014年からは、香川県の新任者研修の一講座として「讃岐の伝統の食文化『讃岐うどん』の継承と発展」と題して講義を行っており、この講義も開始から12年となった。
さらに香川大学農学部では2016年から「うどん学」の講座が始まっているが、その講義資料として、その当時の香川県職員研修のための幾つかの資料を提供させていただいた。
これらの講義などを通して使用してきた教材は、さぬきうどん研究会が発刊した会報や図書などの発刊物や、讃岐うどんの業界の関係者が発刊した讃岐うどんに関する図書や刊行物などの他、筆者の体験や図書館などで得た各種の資料などを調査・研究して講義用に編集してきたものである。こうした活動を積み重ねてゆくうちに、必然的に「讃岐うどん」に係る資料が集積してゆくこととなった。
ただ、「讃岐うどん」とは、日本の一地方、讃岐・香川県の食文化である。さらにうどんは米飯と異なり主食でもなく、当然小麦も農作物の主役でもないことから、特に記録や証拠となるものが極端に少ないことに加えて、筆者自身の文献や資料の収集・調査能力の弱さや小麦やうどんに関する知識や経験も薄弱なことから、とりまとめは推測や継ぎ剥ぎだらけのものになる危惧があった。そのような浅薄のまとめ故に、讃岐うどんの関係者などから勉強不足との誹りを受けることは覚悟の上で、「讃岐うどん」について講演や講義を続けてきた者の責務として本書をまとめることとした。
なお、本書はさぬきうどん研究会の目的である「さぬきうどんの伝統を継承し、発展をはかるために文化的、技術的活動を行う。」ことを目指したものであるが、学術的な面からは不足した点が多い。今後、それぞれの部門の専門家や研究者、物知りの方のご教授を素直に承りながら、内容や資料に追加や修正を行うことで、ご容赦を賜りたいと思う。ただ、専門的な分野の事柄については、その専門家や研究者などの論評や発表にお任せしたいと考えている。

【目次】
はじめに
第1章 香川県はうどん県!
 1 香川県はうどん県?
 2 香川県民のうどんの嗜好度
 3 香川県民のうどんの消費額
 4 香川県のうどんの生産量や製麺業界の実情
 5 香川県内のうどん店の事情
 6 讃岐うどんの特徴と味わい方など
第2章 小麦とめん類の起源
 1 小麦の栽培の始まりと伝播
 2 中国の小麦粉食品(めん類)の発達
 3 唐の時代の小麦粉食品(めん類)の事情
 4 中国の小麦粉食品(めん類)の分類
第3章 めん類の日本への伝播と発達
 1 小麦や製粉技術の伝播・伝来
 2 奈良・平安時代のめん類
 3 うどん(めん類)の伝来についての諸説
 4 「うどん」の起源についての諸説
 5 讃岐におけるうどん伝来の空海説
 6 讃岐におけるうどんについての諸説や記録
第4章 日本における「うどん」と「うどん屋」の誕生と発達
 1 「うどん」の記述
 2 うどん屋の誕生
 3 小麦の製粉技術の発達
 4 うどん作りの技法広がる
第5章 讃岐におけるうどん食習慣の始まりと醸成
 1 讃岐におけるうどん食習慣の始まり
 2 上質小麦の産出と拡大
 3 讃岐・香川の水車製粉の盛衰
第6章 讃岐のうどん食文化の形成と変化
 1 讃岐におけるうどん食文化の形成
 2 年中行事や農耕行事とうどん食習慣
 3 年中行事など以外のうどん食習慣
 4 讃岐のうどん食文化の革命的変化
第7章「“讃岐”うどん」の誕生と発展
 1 命名「さぬきうどん」「讃岐うどん」
 2 「さぬき・讃岐うどん」とは?-香川県のうどん業界とうどんの表示や製造規制
 3 第1次讃岐うどんブーム
 4 第2次讃岐うどんブーム
 5 第3次讃岐うどんブーム
 6 讃岐うどんブームの継続を支えて
 7 讃岐うどんのブランド力と香川県の認知度
第8章 讃岐うどんが生まれた風土と産物
 1 讃岐の気候風土と小麦の栽培
 2 香川県の小麦奨励品種の変遷
 3 香川県産小麦「さぬきの夢」の開発
 4 うどん食文化に必要な塩、いりこ、醤油の産地
第9章 うどん食文化の継承と発展をめざして
 1 香川県民の健康度
 2 香川県民のうどん食習慣の変化と健康的食べ方
 3 讃岐うどんの食文化を未来に継承してゆくために
筆者の讃岐うどん遍歴
あとがき
歴史年表 讃岐うどんの歴史年表
補足資料 年中行事や農耕行事とうどん食習慣(県内各地区毎)
付  録 手打ちさぬきうどんの作り方
参考文献および資料

【著者紹介】
〔著者〕
諏訪 輝生